あらすじ
五年続けて、七夕になると榊原直人は「七夕くじ」と称する小さな遊びを用意していた。
恋愛系のSNSで見つけたのだという。木箱の中には何枚もの木札が入っていて、私と、直人の幼なじみである宮下千夏が一枚ずつ引く。何が当たるかは、その年の運次第――そういうルールだった。
私が引くのは、いつも千円もしないような小物ばかり。木製のヘアブラシ、小さな鏡、マグカップ、安いアロマグッズ。
それに比べて千夏が引き当てるのは、高級腕時計や限定バッグ、ジュエリー、高価な旅行券だった。
私はずっと、自分のくじ運が悪いだけだと思っていた。
今年の七夕の前日までは。
胃を悪くして仕事を休んでいた私は、直人が閉じ忘れたパソコンを何気なく見た。画面には、LINEのトーク画面が開いたままになっていた。
千夏から、ついさっきメッセージが届いていた。
「今年の七夕くじ、どうする?」
直人は、ほとんど間を置かずに返していた。
「いつも通り。星の印がある札は千夏用。残りは美月に適当に引かせればいいよ」
その二行を見つめているうちに、指先から少しずつ体温が失われていった。
五年間。
一度だって、運になんて任せていなかったのだ。