あらすじ
ある暑い日の昼下がり。人の気のない街道を駆ける男が1人。男のちょんまげは大きく乱れ、その麻で出来た着物は、まるで水を浴びせられたように男の肌にピタリと張り付いていた。男の年は10代のあどけなさが抜けてない、まだまだ若輩者であった。男はある手紙を持って街道をひた走っていた。息は荒れ、額からは滝の様に汗が地面に落ち、手足が疲労により悲鳴を上げて、心の臓が破裂しそうになっていても、男は足を止めることはない。
「これで、豊臣の裏を掛けるだっ……」
男の名は吉兵衛(よしべえ)。彼は北条家の間者であった。吉兵衛は機密情報を主君へと渡すために走り続けるが、とうとう追っ手に追いつかれてしまう。
咄嗟に身を隠すために、目についた社に飛び込むが、そこは”村の守り神”が祀られている社であった。