あらすじ
セラフの少女フィナは、その日、初めての翼を授かることになっていた。
導き手は、六翼の元将軍エイリノラ。
場所は学院の大広間ではなく、彼女が昔から気に入っていた高原の花畑。
儀式は成功した。
フィナの背に、淡い青の第一翼が生まれる。
そして遠くでは、千年にわたり空に浮かび続けた都が、静かに崩れ始めていた。
鐘が鳴る。
塔が落ちる。
滝が消える。
それでもエイリノラは言う。
「大丈夫。続けよう」
「ご飯を食べるの」
最高位の転送術で学院からケーキを盗み、
役に立たない権能の話をして、
四百年前の落書きを思い出して。
世界の終わりまで、あとわずか。
これは第七紀元より遥か昔――
竜とセラフの時代、第二紀元最後の日に交わされた、
ひとりの先生と、まだ一度も飛んだことのない少女の物語。
※『Θόλοτάφος』と同一世界を舞台とした独立短編です。本作単体でもお読みいただけます。