あらすじ
四海の交易を一手に握る自由都市・胡蝶湊こちょうみなと。ここには身分も血筋も問わず、「事件ごとに一番詳しい者が円卓の中心に座る」という奇妙な掟を持つ検死ギルドがある。かつて医家の跡取りとして将来を嘱望されながら、ある誤診騒ぎで生家を追われた棗なつめは、今やそのギルド最底辺で日銭を稼ぐ検死官見習い。過去より今日の飯代が気になる筋金入りの現実主義者だが、名家の隠居の"病死"を検分した瞬間、他の誰にも見えていない違和感に気づいてしまう――それは、彼女が誰かの代わりに謳われるためではなく、彼女にしか語れない死体の声だった。