あらすじ
豆腐の角に頭をぶつけて死んだ。
そんな、誰が信じるんだよ。
だが松田優樹、二十代。
本当に死んだ。
そして、なぜか天国で神様から与えられたスキルは――
『クラフト』と『パン材屋』。
「パン材屋ってなんだよ!」
神様にも分からない謎のスキルを抱え、優樹は異世界の森へ放り出された。
街どころか、人里すら見えない森のど真ん中。
「……俺、異世界転生でこんなスタート切る奴、初めて見たわ」
途方に暮れていた優樹だったが、森の中に小さな空き地を見つける。
そこで『クラフト』を試してみると、木材から小屋を作れることが判明。
そして謎のスキル『パン材屋』を使ってみると――
小麦粉、バター、卵、砂糖。
パンを作るための材料が、なぜか次々と出てきた。
「……これ、もしかしてパン屋やれってことか?」
こうして優樹は、森の中に小さなパン屋を作ることになった。
しかし、人のいない森の中でパン屋を開いても客なんて来るはずがない。
……そう思っていた。
「キュ?」
最初にやってきたのは、一匹の小さな魔物だった。
試しに焼いたパンを分けてやると、翌日には仲間を連れてやってきた。
その次の日には森の奥からエルフが。
さらにその翌日には、道に迷った冒険者が。
いつしか、誰も知らなかった森の小さなパン屋には、少しずつ常連客が増えていく。
魔物も、人間も、エルフも。
種族なんて関係ない。
焼きたてのパンを食べれば、みんなちょっと幸せになる。
「いらっしゃい。今日は何にする?」
今日も森の中では、パンの焼ける香ばしい匂いが漂っている。
これは、豆腐に殺された男が、異世界の森でのんびりパン屋を営む物語。