あらすじ
三十五歳。
仕事も生活も、別に悪くない。
ただ、子供の頃みたいに「明日が楽しみで仕方ない」と思うことは、いつの間にかなくなっていた。
そんなある日、実家の片付けで見つけたのは、二十五年前に遊んでいた携帯育成玩具《ViVi》。
黄ばんだ本体には、母親に作ってもらった古いテプラが二枚。
『ポコ』
『さいきょう!』
試しに電池を入れてみると、小さな白黒液晶に表示されたのは、もう二十年以上誰にも呼ばれていなかった昔のあだ名だった。
《ナッツ?》
かつての育成玩具《ViVi》は、二十五年の間にAI、アバター、配信、ゲームを融合した巨大サービス《VIVI》へ姿を変えていた。
旧型COREに残されていたポコを現代へMigrationすると、二十五年前の小さな相棒は、初めて声を持ち、自分の身体を選び、知らない世界へ飛び込んでいく。
初めての配信。
初めての視聴者。
新しい友達。
初めての敗北。
服を選ぶこと。
知らない誰かと遊ぶこと。
そして、小さな公式大会。
「さいきょうになる」
それは、子供だったナッツがポコにした約束。
けれど二十五年後の世界には、強くなること以外にも面白いものがたくさんあった。
これは、昔に戻る物語ではない。
三十五歳になった男と、二十五年前からやってきた相棒が、もう一度一緒に遊びながら、
「明日やりたいこと」を少しずつ増やしていく物語。