あらすじ
十年前、私を「住む世界が違う」と言って捨てた御曹司が、高級車に乗って現れた。
その日に限って、私が履いていたのは――七百九十円の安いサンダルだった。
「そういう安いものを平気で身につけるところ、昔から変わらないよな」
昔と変わらない笑顔で、昔と同じように私を見下す元彼・神崎悠真。
仕事も頑張った。
服も変えた。
少しでも「捨てられて当然だった女」から遠ざかろうと、十年間必死に生きてきた。
それなのに、彼の前では今でも二十一歳の傷ついた私に戻ってしまう。
そんな私の隣に立ったのは、取引先の常務・瀬名遼介だった。
「彼女の価値を、靴で測るんですか」
彼は、私のサンダルを笑わなかった。
惨めだとも言わなかった。
かわいそうだとも言わなかった。
ただ、私が傷ついていることに気づき、私の意思を尊重し、歩幅を合わせてくれた。
けれど私は、もう恋なんて怖い。
優しくされたら期待してしまう。
期待したら、また捨てられるかもしれない。
十年前の恋を終わらせられない女と、
そんな彼女を急かさず、答えを求めず、隣で待つ男。
これは、昔の男を見返すための恋ではない。
「誰かに選ばれなければ価値がない」と思い込んでいた私が、
自分自身の価値を取り戻し、もう一度誰かを好きになるまでの物語。