あらすじ
だしがじゅわっと広がる卵焼き。しょうがの香る鶏肉。冷めても、もうひと口食べたくなるご飯。
四十五歳の沓沢千景は、町のスーパーで二十年間、惣菜売り場を支えてきた。ところが、社長の息子が店長になると、その仕事は「おばさんの古臭い料理」と切り捨てられる。
「パートのくせに、経営に口を出さないでください」
退職を迫られた千景が、退職金と貯金で開いたのは、スーパーのすぐ隣にある小さな弁当屋「ひと折」。自分の料理にお金を払ってくれる人はいるのか。不安を抱えて迎えた開店の日、窓の外には、懐かしい顔が並んでいた。
一方、元の店では、かつての人気惣菜が売れ残り始める。値下げ競争、根拠のないうわさ、そして経営不振の責任転嫁。けれど、千景が積み重ねてきた仕事の価値は、もう誰にも消せない。
おいしい昼ご飯と、自分の居場所を取り戻す。お腹がすいて、胸がすく、大人の再出発と逆転の物語。