あらすじ

語り手は、旅行鞄の持ち手に付いた小さな真鍮の鈴です。目がないので、音だけで世界を見ています。 持ち主は藤谷ちはる、二十九歳。六月で三十になります。旅と、旅先での出会いが好きな会社員です。手帳の表紙の裏には毎年、命は短し走れよ乙女、と書き写します。本当は恋せよ乙女という歌なのですが、七年前から間違えたまま、走り続けています。 三月、雪の霧尾へ二泊三日。雪は音を吸うので、わたしにはよく聞こえない旅でした。 去年の秋から、ちはるさんは走らなくなりました。今回は、追いかけずに済む旅でした。向こうから来てくれたからです。

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小説を読もう2026/09/23
  • 現在の作品めじるしの鈴 霧尾の重い雪――鞄の鈴は、まだ鳴らない紙の音を待っています