あらすじ
「この女性は、俺の妻だった」
男はそう訴えた。
だが、社会のあらゆる記録を保持する基盤システム《AKASHA》は、別の男を彼女の夫だと示している。
婚姻記録も、生活履歴も、旅行も、買い物も。
すべてが一致していた。
男の記憶を除いて。
――近未来。
人々は、自分の人生をすべて覚えておく必要がなくなった。
出生から現在までの行動、契約、医療、移動、交友。
必要な情報はAKASHAに記録され、必要な時に確認すればいい。
人間の記憶より、記録の方が正確なのだから。
そんな社会にも、記録を調べるだけでは処理できない事件がある。
社会安全庁・事案管理局《例外事案課》。
そこへ集められたのは、正しい記録を疑う人間ではない。
記録が正しくてもなお残る「なぜ?」を拾う人間たちだった。
元・通常事案評価部の片瀬遼も、その一人。
記憶は証拠ではない。
勘違いなら、それでいい。
だが――なぜ勘違いしたのか。
その疑問だけは、捨てない。
記録は正しい。
分析も正しい。
システムは正常に動いている。
それでも解けない事件を、人間が問い直す。
そして一度解かれた例外は、二度と例外にはならない。
《AKASHA》が社会を支える時代の、近未来SFミステリー。