あらすじ
三十五歳の神町、坂口、木梨の三人は、高校の同級生。年に一度、各地を巡ってキャンプをするのが、いつしか義務のような恒例行事になっていた。
しかし、家庭や仕事の事情もあり、彼らは今年のキャンプを「最後」にしようと決めていた。
秋の深まる静かな湖畔。
焚き火の炎を囲み、酒を酌み交わす男たちの間に、重苦しい沈黙が下りる。
正義感の強い坂口が、グラスを置いたまま、不意に口を開いた。
「――なあ、ちょうど18年前の今日、この湖畔で女の子が消えたよな」
その一言で、あの夜の記憶が蘇る。
18年前の高校卒業間際、自殺しようとしていたひとりの少女を彼らは救った。しかし直後、少女をいじめていた加害者グループが押しかけ、修羅場と化した。
混乱の中、神町と坂口は加害者たちを追い払い、木梨は少女を逃がした――はずだった。
だが、坂口はあの夜、林の切り株のそばで主犯格の女の死体を見たという。
そして、その傍らで少女が「私がやった」と告げたのだと。
神町は「少女は殺害された」と思い込み、坂口は「神町が人を殺した」と疑い続け、木梨は「自分が逃がしたせいで彼女は死んだ」と怯え続けていた。
お互いが誰かを庇い、誤解を抱えたまま「翌朝、一切口を噤んだ」18年越しの沈黙。
それぞれの隠された秘密と、坂口がこの話題を持ち出した「本当の理由」が交錯するとき、あまりにも切なく歪んだ「優しい罪」の全貌が明らかになる――。
これは、サスペンスの顔をした、あまりにも不器用な愛と贖罪の物語。