あらすじ
病室から一歩も出られなかった少年、神楽勇気は、退屈を紛らわせるために妄想をしていた。もし学校に襲撃者が現れたら、どうやって皆を逃がすのか。もし巨大な船を手に入れたら、どんな国をつくるのか。誰にも迷惑をかけず、誰にも負けない王になれたなら――そんな、叶うはずのない空想を。病に倒れた勇気が死後の世界で出会ったのは、彼の途方もない妄想に半ば呆れた女神だった。女神から授けられたのは、思い描いたものを現実へ引き出すスキル、《空想具現(イマジン・リアライズ)》。ただし、何でも生み出せるわけではない。構造を理解できないものは壊れ、動かす人がいない船はただの木片にすぎず、誰かの心そのものを作り変えることもできない。強い願いには、必ず強い代償と責任が伴う。異世界の辺境、白波港ハルミアに落ちた勇気は、港を食い物にする徴税官、居場所を失った船大工の少女、そして祖国を奪われた名を隠す旅の剣士と出会う。世界征服の第一歩として港を手に入れようとした勇気だったが、彼らの願いに触れるうちに知る。王とは、人の上に立つ者ではない。最後まで逃げずに、皆の帰る場所を守る者なのだ。壊れた船、空っぽの倉庫、十数人の仲間から始まる建国譚。
妄想ばかりしていた少年は、いつか本当に世界を変える王になれるのか。