あらすじ
『戻らない日常2 「ただいま」の消えたホーム』あらすじ
横浜市港南区で暮らす斉藤家は、大手自動車メーカー「イモト」の開発責任者である父・勝、大手商社「栄商事」で営業を担当する母・杏子、小学六年生の乃亜、小学四年生の貴教の四人家族。乃亜は委員会活動と少年バスケットボールチーム「港ブルーサンダース」に励み、持ち前のギャグ体質で学校でも人気者になっていく。貴教も少年野球チーム「横浜リトルファイヤーズ」へ入団し、強肩を生かした外野手として歩み始める。家族は毎週「フライデー爆笑ラジオカフェ」を楽しみ、日常の失敗談を「爆笑通信」へ投稿しては、四人で笑い合っていた。
一方、職を失った責任を社会や他人へ押しつける三上達也は、楽しそうに暮らす人々へ一方的な憎悪を募らせ、川崎駅での無差別殺傷事件を計画していた。ある金曜日の夕方、仕事を終えた杏子は、川崎駅から家族へ「いま川崎。これから帰るね」とメッセージを送る。しかし、京浜東北線ホームで突然刃物を振るった三上に襲われ、搬送先の病院で38歳の生涯を閉じる。
「誰でもよかった」という三上の言葉に、勝は「杏子は誰でもいい人間ではない。乃亜と貴教の母親で、俺の妻だ」と怒りをあらわにする。警察は防犯カメラの映像をつなぎ、逃走した三上を逮捕するが、明るく賑やかだった斉藤家から笑い声は消える。乃亜はバスケットボールから離れ、貴教も野球のボールを投げられなくなり、勝は慣れない家事と仕事の間で追い詰められていく。
刑事裁判で三上には無期懲役、民事裁判でも高額の損害賠償が命じられる。しかし、どのような判決も杏子の命を取り戻すことはできない。勝、乃亜、貴教は学校や職場、チームの仲間、被害者支援員に支えられ、少しずつ立ち上がっていく。乃亜は再びコートへ戻り、貴教も外野から力強い返球を見せ、勝も人の命を守る自動車開発へ復帰する。
やがて三人は事件現場を訪れ、杏子へ花を手向ける。母の料理を再現しようとして失敗した夜、三人の食卓に久しぶりの笑い声が戻る。笑うことは、杏子を忘れることではない。杏子が残した言葉や笑顔は、今も三人の日々を静かに支えていた。以前と同じ四人の日常には戻れなくても、杏子と生きた時間を胸に、三人は新しい「ただいま」のある暮らしへ歩き始める。