あらすじ

フィリエンヌ・クラルヴェーゼが使える魔法は、火魔法だけ。 しかもその火は、蝋燭一本に灯すのが精いっぱいだった。 けれど、彼女は調合師だ。 小さな火を何時間でもほとんど同じ温度に保てるフィリエンヌは、薬や軟膏、香水、魔法インクを作らせれば、とびきり優秀だった。 亡き師匠が遺した古い魔法馬車。 その床下から出てきた、ふわふわの|綿雲狐《わたぐもぎつね》シュネリュ。 一人と一匹で移動調合屋を始めたフィリエンヌは、ある日、街道脇に倒れていた男を拾う。 レオナールク・ヴァイスフェルト。 強大な魔力を持ち、あらゆる属性の魔法を操り、剣も料理も野営も交渉も計算もできる、妙に何でもできる男だった。 一方のフィリエンヌが得意なのは、調合以外ほぼ何もない。 「昨日の売上は?」 「たくさん売れました」 「金額を聞いている」 「銀貨がいっぱいです」 「……今日から俺が帳簿をつける」 こうして始まったのは、調合しか見えていない魔女と、過去を語らない万能な居候と、一匹の狐による馬車暮らし。 薬草を追いかけ、依頼を引き受け、ときどき面倒事に巻き込まれながら、馬車は町から町へと旅をしていく。 いくつもの土地を巡り、いくつもの季節を越え、やがて少女は大人になっていく。 けれど彼女はまだ知らない。 自分の弱い火が、決してありふれたものではないことを。 彼が、なぜ王都から来た騎士を避けるのかを。 そして、この旅が二人をどこへ連れていくのかを。 これは、弱いけれど決して消えない、小さな火の物語。

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小説を読もう2026/09/23
  • 現在の作品弱火の魔女は、今日も馬車で旅をする ~万能魔法使いと始める、二人と一匹の移動工房~