あらすじ
西暦二三四年、五丈原。
蜀漢丞相・諸葛亮孔明は死んだ。
――少なくとも、中華の歴史にはそう記されている。
漢室復興のため、主君・劉備の遺志を背負い、幾度となく北伐を繰り返した孔明。
だが五丈原で自らの死を偽った彼は、劉氏の血を引く少年・劉溟とともに中華を離れる。
目指すは東。
海の彼方にあるという、争いから遠く離れた土地。
「桃源郷……ですか。行ってみても、よいかもしれませんね」
やがて海を渡った二人が辿り着いたのは、倭の地だった。
そこで孔明が始めたのは、天下を争う戦ではない。
川を測り、水路を引き、田を拓き、人々とともに国を造ること。
そんな彼の前に現れる、倭の知者。
いまだ王になりきれぬ一人の女王。
そして海の向こうから、再び伸びてくる中華の影。
五丈原で一度死んだ臥龍は、もう天下を望まない。
王朝を残すために民がいるのではない。
民が生きるために、国がある。
これは歴史に名を残した天才軍師が、
歴史から名を消した後の物語。
そして後の世に、別の形で語り継がれることになる――
名もなき国造りの物語である。
※本作は『三国志』、三国時代および古代日本の歴史、日本神話などを題材とした歴史IF・フィクションです。史実・伝承を下敷きとしつつ、人物、年代、出来事等に独自の解釈・創作を含みます。