あらすじ
「愛してる」と言った人から、名前をなくす。
それが、篠宮家に代々伝わる奇妙な教訓だった。
十七歳の篠宮凪は、祖母から受け継いだ古道具店で、二十七年前に失踪した母の姉・雪乃の遺品を見つける。そこに入っていたのは、平成十一年七月二十日消印の小包。中身は、四人の少女が写った古い写真と、ひとつの鍵、そして雪乃の声を録音したカセットテープだった。
――旧校舎の時計を止めて。
――あの子たちに、愛をあげないで。
午前零時、鍵を回した瞬間、凪は古びたドールハウスの中へ落ちる。
そこは、二十七年前の夏が何度も繰り返される星見坂女学院旧校舎。アンティークドレスをまとった四人の少女たちは、自分たちを「堕ちた天使」と名乗っていた。
彼女たちは、ひとりの人間に愛を与えられれば、四人のうち誰かが人間に戻れるという。
ただし、愛を与えた人間は大切な記憶をひとつ失い、その名前をドールハウスに奪われる。
雪乃もまた、かつてこの場所で愛を選んだひとりだった。
凪は、失踪した叔母を取り戻すため、四人の天使が隠している「最初の願い」の真相を探る。しかし、彼女たちの中には、凪の母親しか知らないはずの秘密を知る少女がいた。
愛は救いなのか。
それとも、相手を自分のものにするための、もっとも美しい呪いなのか。
1999年の夏が終わるまでに、凪は「誰かを愛すること」と「誰かに自分を差し出すこと」の違いを見つけなければならない。