あらすじ

人と物の怪が、同じ街で暮らす世界。 鬼が会社に勤め、狐が人間と家庭を持ち、河童が川の管理人として働く。 人ならざる者たちは、もはや昔話の中だけの存在ではない。 そして、人と物の怪には共通の法律がある。 人を殺せば、鬼でも殺人罪に問われる。 物を盗めば、狐でも窃盗罪になる。 反対に、人間が物の怪を傷つけても、相手が人ならざる者だからという理由で許されることはない。 法の下では、人も物の怪も等しい。 少なくとも、建前ではそうなっている。 御影総一郎、三十四歳。 彼は、人間でありながら物の怪が関わる事件ばかりを扱う弁護士だった。 鬼の殺人事件。 狐の身分詐称。 座敷童の居住権。 河童による傷害事件。 人の夢へ入り込んだ夢喰いの不法侵入。 人間の法律だけでは簡単に答えを出せない事件が、彼のもとへ持ち込まれる。 物の怪を嫌う人間からは「妖怪の味方」と呼ばれ、物の怪たちからは「人間の弁護士」と警戒される。 それでも総一郎は法廷に立ち続ける。 彼は物の怪を信じているわけではない。 人間を信じているわけでもない。 信じているのは、証拠と事実だけだった。 かつて総一郎の家族は、ある物の怪が起こしたとされる事件に巻き込まれた。 犯人とされた物の怪は裁判で有罪となり、処刑された。 だが後になって、その判決が誤りだった可能性を総一郎は知る。 あの日、本当に裁かれるべきだったのは誰だったのか。 その答えを求めながら、御影総一郎は今日も人ならざる者の隣に立つ。 「俺は物の怪の味方じゃない」 彼は法廷で言う。 「俺は、法の下に立つ者の味方です」 人と物の怪。 二つの種族が共に生きる社会で起きる、奇妙で厄介な事件。 これは、人ならざる者たちを弁護する一人の男の物語である。

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カクヨム2026/09/22
  • 現在の作品『物の怪弁護士 御影総一郎』