あらすじ
陸上競技、800メートル。
速さだけでは勝てない。
持久力だけでも勝てない。
肉体と精神、そのすべてを削りながら走る、過酷な二周。
浜松翔陽高校二年、蒼樹零。
東海大会800メートルを制するほどの実力を持ちながら、彼にはひとつ、決定的に欠けているものがあった。
どれだけ追い込んでも苦しさを感じない。
身体が壊れていても、痛みに気づかない。
そして――
仲間が泣いていても、その涙に心を揺らすことができない。
「……すみません。苦しいって、何ですか?」
個人種目では圧倒的な強さを見せる一方、仲間とバトンを繋ぐマイルリレーでは、速さだけではどうにもならないものと向き合っていく。
勝利。敗北。挫折。友情。ライバル。
0.01秒を争う世界で、個性豊かな仲間やライバルたちと走り続けるうち、止まっていた蒼樹の中で、少しずつ何かが動き始める。
これは、誰よりも速く走れる少年が――
苦しさを知り、悔しさを知り、誰かと走る意味を知っていく物語。
そしていつか、自分自身の心を取り戻すまでの物語。
青春陸上ストーリー。
『クロノグラフ』