あらすじ
「こんなの簡単ですわ!」
伯爵令嬢アリシアが指を振ると、巨大な魔物が吹き飛んだ。
歓声の中、彼女は当然のように胸を張る。
なお、このお嬢様に魔力はない。
魔法を使ったのは、後ろで腰を抜かしたふりをしている俺だ。
「レオン、もう大丈夫ですわよ」
自分が助けたと、本気で思っている。
(ぎっっっん゛も゛ぢぃぃぃィィぃぃぃ!!!)
始まりは八歳の頃。お嬢様の掛け声に合わせて、こっそり蝋燭に火をつけただけだった。
それが面白いくらいに勘違いした。褒めれば褒めるほど調子に乗り、翌日には自分の才能について語り始めた。
もっと凄いことをやらせたら、こいつは何と言うだろう。
その好奇心に、俺は人生を突っ込んだ。
寝る間を削り、ポーションを飲んで魔法を磨く。魔法で無理なら力ずくで実現できるよう、肉体も鍛え抜く。
何年もの努力を自分の才能だと信じ込み、お嬢様は今日も「わたくしにできないことなんてありませんわ」と笑う。
いいぞ。そのまま育ってくれ。
やがて入学した王立学院で、お嬢様の勘違いは本物の天才たちまで巻き込み始めた。
勝負を挑む名門令嬢。常識外れの魔法に目をつける教師。そして、ますます自信を深める魔力ゼロのお嬢様。
「お望みでしたら、わたくしの実力をお見せしますわ!」
おいおい、そんなことまでできるつもりなのか。
俺は澄ました顔で一礼し、お嬢様のために場所を空けた。
「存分にどうぞ、お嬢様」
ここまで言い切ったこいつに、今さら失敗なんてさせられない。
成功させれば、きっともっと面白いことになる。