あらすじ
四十歳になった俺が、古いパソコンの中で見つけたのは、二十年以上前に遊んでいたMMORPG《アステリオン》のスクリーンショットだった。
仲間と笑い、冒険し、用もないのに集まっていたあの頃。最後に残っていたのは、誰も別れだと思っていなかった「また明日」だった。
次に目を覚ますと、俺は《アステリオン》で使っていたキャラクター――若い頃の姿をした鍛冶師《朔來》になり、ゲームで見慣れた街に立っていた。
そこで再会した昔の仲間から聞かされたのは、俺の知らない十年間だった。
俺が姿を消してから、この世界では十年が過ぎているという。
昔と変わらないところもあれば、変わったところもある。
仲間たちは、俺を待つために止まっていたわけじゃない。仕事を持ち、暮らしを築き、それぞれの十年を生きていた。
俺だけが、その間に何があったのかを知らない。
ただ、かつて俺と共に姿を消した相棒《くるみっくす》だけは、今も行方が分からない。
ここは本当に、俺が知っていた「ゲームの世界」なのか。
俺の知らない俺は、この世界で何をしていたのか。
そして、くるみはどこへ消えたのか。
各地で起こる《境界》の異変を追いながら、俺は失われた自分自身の足跡を辿っていく。
そして、別々の時間を生きた昔の仲間たちと、もう一度この世界を歩いていく。
これは、昔と同じ場所へ戻るための物語ではない。
二十年前に途切れた「また明日」の続きを、もう一度始める物語。