あらすじ
「妻の仕事など、誰にでもできる」
離縁状にそう書き添えて、夫は私を子爵家から出した。
十二年、朝は四時に起き、使用人四十人と、台所と、来客と、冬の薪の量を回してきた。
「承知しました。では、その“誰にでも”をお貸しします」
「……何の話だ」
「日割りで。お代は前金で頂戴します」
街で看板を出した翌日、最初の客は元夫の家令だった。
「奥様……いえ、ドーラン殿。三日でいい、誰か寄越してくれ」
一人目は、朝四時に起きられずに帰ってきた。
二人目は、来客の席次で公爵夫人を下座に座らせて帰ってきた。
三人目は、薪の量を間違えて、子爵家の東棟を三日間凍らせて帰ってきた。
四人目を送る朝、元夫が自分で店に来た。
「……戻ってくれ」
「どちらの席へでしょう。妻の席ですか、それとも」
私は帳面を開いた。
「うちの、四人目の席ですか」