あらすじ
2044年、関西の迷宮技術特区・星ノ宮市。
55歳の高倉美佐は、天ヶ峰ダンジョンを管理する会社で運営課長を務めている。
初級魔物なら倒せる。防御魔法も少し使える。けれど、若い探索者のようには走れない。美佐の武器は、短槍や盾よりも、癖の強い部下たちをまとめ、全員が生きて帰れる道を選ぶことだった。
ある日、31年前に封鎖された地下七階から、撤去済みの非常電話がかかってくる。
救助を求める声の主は、2013年の異常震災で行方不明になった、美佐の父を名乗った。
美佐は、79歳になった第一世代探索者の母・千代、魔道具を勝手に改造する部下、融通の利かない経理担当、そして30年前にともに探索者を目指した救助隊長・久世誠司と、地図にない階層へ向かう。
そこで待っていたのは、魔法を生み出すオーブ、時間の乱れた空間、異世界へ続く扉、そしてダンジョンそのものを管理する謎の声だった。
父にとっては、わずか数年。
娘にとっては、三十一年。
これは、少し年を重ねた大人たちが、取り戻せない時間を抱えながら、それでも笑って地下へ潜り、全員で地上へ帰ろうとする物語。
冒険と職場コメディ、ときどき遅すぎる恋。そして帰還した夜には、よく冷えた一杯を。