あらすじ
男爵令嬢リゼ・アスティメイラには、前世の記憶がある。
この世界は、前世で読んでいた恋愛小説『聖女は白薔薇の庭で恋をする』の世界。
しかしリゼは、ヒロインでも悪役令嬢でもなくーー物語の途中で一度だけ名前が登場し、二行ほど台詞を喋って消えていく、正真正銘の脇役令嬢。
それならば物語になど関わらず、平穏な人生を送ればいい。
そう決意していたリゼだったが、十五歳の冬ーー王宮の夜会から帰る途中、雪の降る庭園で、一人の少年を助けてしまう。
黒髪に赤い瞳。
雪の上に倒れながら、それでも獣のような目で他人を睨みつけていた少年。
彼こそが後に、「王国の鬼神」「血染めの公爵」「人の心を持たない怪物」と恐れられる男ーーイヴァン・ハインリヒだった。
関わってはいけない危険人物。
だからこそリゼは、彼を助けたあと、こう告げた。
「今日のことは、どうか忘れてくださいませ」
それで終わるはずだった。
ところが、それから五年後ーー、社交界へ正式にデビューしたリリアーナの前へ、若くして公爵位を継いだイヴァンが現れる。
冷酷公爵。
王国最恐の男。
誰にも笑わないはずの彼が、その瞬間だけ、穏やかに微笑む。
「アスティメイラ譲。俺と結婚してくれ」
「はい……?」