あらすじ
アルシェット王国の第二王子クレイスは、冷酷な人物として通っています。けれど本当は、冷たく言い放った直後に「いまの、痛かったですか」と聞いてしまう人です。人を叱った夜のことを聞かれると、答えられなくなる人です。
彼の冷酷が成立していたのは、相手がいつも黙って傷つく善良な令嬢だったからでした。
その令嬢、公爵令嬢ロゼリア・ヴァルトが、八年続けた善良をやめます。学院の評価簿はN、記載事項なし。婚約者に名前を呼ばれたこともない。善良でいれば助かるはずが、助かりませんでした。
「わたくし、明日から悪役令嬢に戻ります」
けれど、戻ったロゼリアがやったのは悪事ではありませんでした。学院の規程集のいちばん後ろに書いてある、異議申立ての手続きです。予算の不明朗、見逃された遅刻、緩められた門限、規程にない採点項目。ひと月で七件。
悪役令嬢が噛みついてくると、殿下は冷たくする理由を失います。答えれば、地が出ます。