あらすじ
最初のスライムに「あら、迷子?」と話しかけた母は、その日のうちに、三年後の中ボスを村の炊き出し当番にした。
勇者の俺には、今日も経験値が入らない。
■俺(リオ/前世:三浦圭介)
ソシャゲ運営会社のレベルデザイナー。周年イベント前夜に過労死し、自分が作ったRPG『アストラル・クロニクル』の勇者に転生した。
ゲームの勇者の過去設定は、たった一行。
〈故郷の村は魔王軍に焼かれ、母は勇者をかばって死んだ〉
書いたのは、俺だ。
本編開始まで、あと三年。経験値テーブルもボスの行動パターンも、全部頭に入っている。最短で強くなって、あの一行を阻止する。……はずだった。
■母(マルタ)
ゲームには名前も立ち絵もなかった、ハルテ村のごく普通の母親。
ステータスは【村人 Lv.1 スキル:なし】。戦わない。怖がらない(たぶん、気づいていない)。
魔物を見れば「顔色悪いわね」と弁当を広げ、食べる前には必ず手を洗わせる。相手がゴブリンでも、魔王軍でも。
■この世界のルール
経験値は、敵を倒さないと入らない。そう作ったのは俺だ。
そして三年前のこの世界では、ボスたちはまだボスになっていない。設定欄に一行しか書かなかった彼らには、俺の知らない事情があった。
母が何かするたびに、俺の攻略チャートは崩れ、世界はちょっとだけ良くなっていく。
魔王軍人事局の係長は、今日も報告書に「原因を調査中」と書く。
天然の母に振り回される、戦わない異世界コメディ。