あらすじ
「儚げな令嬢」と見紛う容姿の青年、ルシエル。その正体は、旧神聖貴族ヴェルニエ公爵家が権力闘争から己を守るため、身代わりとして飼い殺しにしてきた「偽りの姫」だった。
十四の夜、囮として送り込まれた戦場でただ一人生き延びた彼は、今、名も持たぬ旅人として各地を渡り歩いている。目的はただ一つ――生家の罪の証拠を集め、匿名でそれを売り払い、一族が自滅していく様を陰から見届けること。
派手な攻撃魔法は使えない。けれど、解析・結界・生活魔法を極めた彼の「地味な実力」は、時に剣より鋭く敵を追い詰める。
行く先々で出会う協力者たち、少しずつ迫ってくる追手、そして少しずつ明かされていく壮絶な過去――お人好しなのに世話焼き、丁寧なのにどこか達観した青年の旅は、静かに、確実に一つの貴族家を追い詰めていく。
これは、"自分の存在を世界から消すため"に旅する青年が、それでも誰かの居場所になってしまう物語。