あらすじ
岡野敦には、帰る場所がなかった。
仕事も、人間関係も、自分自身の生き方さえもうまくいかない。そんな敦がたどり着いたのは、前原正義という口の悪い男のいる、小さな事務所だった。
そこには、家族とうまくいかない者、施設を出た若者、働き始めた少年、絵を描く少女、異国からやって来た青年――それぞれ違う事情を抱えた人々が、いつの間にか集まってくる。
豪華なものは何もない。
あるのは、誰かが作った夕飯と、少し狭い食卓。
「腹、減ってるか?」
最初は、それだけだった。
誰かを助けることと、その人の人生を決めることは違う。
手を差し伸べることと、引き止めることも違う。
ここにいたいなら、いてもいい。
出ていきたいなら、出ていけばいい。
そして、また腹が減ったら帰ってくればいい。
これは、行き場をなくした人々が同じ食卓を囲みながら、それぞれの「帰り道」を探していく物語。
そしていつか――
ここから出ていくための物語。