あらすじ
空から落ちてきた青年、レオン・アステル。
剣の腕は一流。
戦場にも慣れている。
だが、彼が故郷だと名乗った《エルディア王国》は、どの地図にも記録にも存在しなかった。
身元不明のまま辺境都市フェルナで冒険者となったレオンは、普通の鉄剣一本で魔物を斬り、荷物を運び、怪我人を助けながら、新しい生活を始める。
そんな彼の右腰には、刀身すらない古びた剣柄があった。
どれほど強い魔物が現れても、レオンはその剣を抜かない。
「強ければ使う剣じゃない」
やがて、奇妙な怪物が現れる。
確かに斬った。
血も出た。
剣にも痕跡が残っている。
それなのに――傷だけが消えていく。
何度傷つけても、斬られたという結果そのものを失って立ち上がる黒灰の獣。
その時、今までどんな強敵にも応えなかった古い柄に、無数の白い灯がともる。
《万灯継界剣レガトゥム》
それは、強さを競うための聖剣ではない。
誰かが確かに届かせたものを、「なかったこと」にさせないための剣。
帰る国を失った青年は、消される出来事を聖剣で残しながら、この世界で仕事をし、仲間と出会い、三日先しか持たなかった自分の未来を少しずつ伸ばしていく。
これは勇者ではない男が、いつか《聖剣の勇者》と呼ばれるまでの物語。