あらすじ
「あの人が、横領などするものか」
無実の罪で父を喪い、婚約者にも捨てられ、雨の中へ放り出された男爵令嬢ヴィオレッタ。そんな彼女に、傘も差さず手を伸ばしたのは、かつて父に命を救われたという公爵ロレンツォ——養い親にして、彼女がひそかに恋する"パパ"だった。
けれど、穏やかな公爵家には、じわじわと影が忍び寄っていた。王家の血を引く第一夫人の、底なしの浪費。そして、この家を内側から食い潰そうとする、誰かの陰謀。優しいだけのパパが、気づかぬうちに追い詰められていく。
——大丈夫。今度のわたしは、雨に打たれるだけの令嬢じゃない。
昼は、いびられても俯くだけの健気な養い子。夜は、この街の闇をまるごと束ねる〈ボス〉。密輸も、賭場も、汚い金も知っている。正義の味方なんかじゃない。それでも、たったひとつ——「大切な人を泣かせる奴だけは、絶対に許さない」。それが、彼女に残された、唯一の掟。
パパを泣かせた奴は、わたしが裏で、静かに消す。
そして、ぜんぶ片づいたら――ついでに、ひとつだけ。
「わたしと、結婚してくださいね? パパ」