あらすじ
前作『尾喰村の九尾殺人』――七人しか死んでいないのに、狐の尾は八本あった。その「一つ多い」謎を、一枚の絵と加算の論理で解いた、やる気ゼロの探偵・御子柴透と、消された線を視る解析士・真白奏。本作は、その事件の余韻から続く御子柴透シリーズ第二作です。
前作で二人が解いたのは〈所有としての愛〉。愛しすぎて囲い、手放すくらいならいなかったことにしたい――そんな歪んだ想いだった。あの村を出てから透は、「整いすぎたもの」を前より深く憎むようになった。
塵ひとつない部屋で、老女は「お手本のような最期」を遂げた。老衰、事件性なし。だが、やる気ゼロの探偵・御子柴透は言う。
「片づけ忘れが一つも無い? ――なら、これは殺人だ」
相棒は、消された線から真実を視る解析士・真白奏。終活施設〈静葉苑〉の〈白紙化〉は、死者の記録も記憶も消し去る。血も凶器も残らない場所で二人が数えるのは、残された証拠ではない。消された一人、飛んだ号室、失われた声――〈無いもの〉だ。
尾喰村が「一つ多い」謎なら、静葉苑は「一人足りない」謎。整えられた死、片づけられた人生、消された一人。完璧すぎる孤独死を、減算の論理で崩していく特殊設定ミステリー。