あらすじ
寿命を担保にすれば、どんな傷も治せる。
ただし、借りた命には返済期限がある。
戦争が終わって八年。
かつて国に寿命を差し出して命を繋いだ元兵士たちが、命簿に記された期限の日に、一人ずつ死んでいる。
病死。
老衰。
事故。
死因はばらばら。
なのに、死んだ日だけが同じだった。
――命簿に記された日と、ぴったり一致している。
命省の取立人・春日井縁は、北方の黒芽村へ向かう。
そこで出会ったのは、灰鉄の義腕を持つ無愛想な鍛冶屋、郷。
だが、彼の命約には奇妙な記録が残されていた。
「右腕欠損。灰鉄式義腕化」
「残存年数――四十七年」
「算定担当者――不明」
数字が合わない。
灰鉄式義腕なら、もっと多くの寿命を担保にするはずなのだ。
誰かが、彼の命の値段を意図的に安くした。
ならば、その差額はどこへ消えた?
そして調査の最中、縁はさらに奇妙な事実を知る。
黒芽村で死んだ元兵士たちは、全員、同じ時刻に死んでいた。
午前四時十三分。
寿命は、そんなに正確ではない。
だからこれは病気ではない。
呪いでもない。
誰かが、人間の寿命を帳簿どおりに回収している。
これは戦争が終わったあとに始まった、もう一つの戦争の話。
そして、かつて一人の兵士を救えなかった女が、自分の過去と向き合う話でもある。