あらすじ

兄の四十九日の夜、誰もいないはずの貸切風呂に、喪服を脱いだ義姉が沈んでいた。 「朔くん。……背中、流してくれる?」 八年前に家を出た俺は、兄の急死で、信州の山あいの寂れた温泉旅館を継ぐことになった二十六歳だ。 女将は兄の妻だった千景さん、三十四歳。黒い着物の襟から覗くうなじまで凛として、従業員にも客にも隙を見せない人。 けれど兄と義姉は、同じ家の廊下の端と端で、別々に眠っていた。 「あの人とは、もう何年も、一緒にお風呂に入ったことなんてなかったの」 宿を買い叩きに来る業者。俺を「売りに来た次男」と睨む仲居。毎月十日に離れへ泊まる、兄を知る女。 そして、兄はなぜ、あの夏の夜更けに渓流沿いの古い源泉小屋へ向かったのか。 湯けむりと浴衣と離れの客室で、喪が明けるのを待てなかった二人が、宿と自分たちをもう一度立て直していく話。 ※性行為の直接描写はありません。前後の空気と余韻で描きます。

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カクヨム
カクヨム2026/09/21
  • 現在の作品兄の急死で寂れた温泉旅館を継いだら、未亡人になった義姉の女将が夜の貸切風呂で待っていた ~着物の似合う三十四歳は、兄に見せなかった顔を俺にだけ見せる~