あらすじ
「二階の奥の部屋の暖炉だけは、どうか処分しないでほしい」
急死した叔父の遺言状に残された、震える走り書き。
けれど弁護士は首をかしげる。
――この家に、暖炉はないはずですが。
鍵のかかった薄暗い部屋で「私」が見つけたのは、
天然石に囲まれ、青い結晶と白金の針が光る、不思議な暖炉だった。
そして棚に残された、見知らぬ少女の名前。
叔父に娘がいたことを、家族は誰も知らない。
ひと月閉ざされていたはずのこの部屋で、
なぜオルゴールは鳴っていたのか。
三十年間守られてきた、小さな暖炉の秘密とは。
――喪失と祈りをめぐる、静かな短編ミステリー。