あらすじ

記憶の片隅にポツンと置き去りにされたような古い話がある。でもフトしたときにその断片が浮かんで、全部を覗きたい気持ちになる。まるで部屋の片隅に積まれた段ボール箱の一番下の箱の隅っこに置かれた、はるか昔に読んだ懐かしい本を読み返したくなるように。
本当に古い話だ。大学を出てから、真っ当なファイナンス会社に四年間ほど勤めたあと、私は怪しげな市中金融会社、いわゆるヤクザの息がかかった街金会社に誤って飛び込んでしまった。おとなしく乗っていれば遥か彼方の終着駅には、穏やかに老いた妻と息子や娘、さらには賑やかな孫たちに囲まれながら次の世界へ安らかに旅立つ私の姿が微かに見えていたのに、レールのポイント切り替えがある駅に列車が止まったとき、誤って別の列車に乗り換えてしまったのであった。私の人生の分岐点は、ここにあったと断言できる。

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アルファポリス
アルファポリス2026/09/21
  • 現在の作品七代祟る