あらすじ

私は、かいだんを集めて上らなければならない――。

そう、彼は告げた。

かいだんの向こうには、いったい何があるのだろう。

高山信英は、いつからか自宅の二階へ上がれなくなっていた。

目の前にあるのは、いつもと変わらないかいだん。
一階から二階へ続く、何の変哲もないかいだんだ。

それなのに、一段目へ足をかけようとすると、身体が動かなくなる。

原因は、眠りにつくたびに見る悪夢だった。

夢の中には、必ず「あの何か」がいる。

姿をはっきりと思い出すことはできない。
けれど、目が覚めたあとも、その気配だけが残っている。

そして夢を見るたびに、現実のかいだんが少しずつ遠くなっていった。

家族にも、友人にも、親しい知人にも相談できなかった。

「かいだんが怖い」

そんなことを話したところで、誰が信じてくれるというのか。

信英自身でさえ、自分がおかしくなったのではないかと思い始めていた。

そんなある日のことだった。

自宅のかいだんを前に立ち尽くしている信英の前に、一人の少女が現れた。

八幡楓。

白粉を塗った肌。
赤い口紅。
そして、どこか古めかしい雰囲気をまとった少女。

彼女は信英を見つめると、唐突にこう言った。

「かいだんを集めなさい」

意味が分からなかった。

「かいだんを……集める?」

楓は静かにうなずいた。

「それが、あなたを解放する近道だから」

信英には、その言葉の意味が理解できなかった。

かいだんなど、集められるものではない。

それなのに――。

その日から、信英の身の回りで奇妙な出来事が起こり始める。

道端。
学校。
公園。
古い建物。
そして、夢の中。

あり得ない場所に、かいだんが現れる。

そして、そのかいだんを見つけるたびに、信英の自宅にあるかいだんの段数が増えていく。

一段。

また一段。

かいだんを集めれば集めるほど、二階へ続くかいだんは長くなっていった。

普通なら、二階へ上がることはますます困難になるはずだった。

しかし、不思議なことに――。

信英は少しずつ、かいだんを上れるようになっていた。

なぜ、かいだんを集めなければならないのか。

なぜ楓は、信英の前に現れたのか。

そして、あの悪夢に出てくる「あの何か」は、一体何なのか。

かいだんを集め続けるうちに、信英は少しずつ真実へ近づいていく。

やがて彼は気づく。

楓が言った「近道」という言葉の意味に。

これは二階へ上るためのかいだんではない。

もっと別の場所へ続く――

かいだんだった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/09/21
  • 現在の作品霊和怪異譚外伝「かいだんのかいだんゾク」