あらすじ
人類は文明を発展させた。
科学を生み、都市を築き、病を克服し、宇宙へ進出した。
だが、その「発展」は本当に一つの方向しかなかったのだろうか。
ある文明は、自然を制御する方法を追究した。
一方で、ある人々は自然の中に生き、儀式や物語を通して、自分が何者なのか、なぜ生きるのか、どうすれば心穏やかに生きられるのかを、何世代にもわたって考え続けた。
しかし、力を持った文明は、自分たちとは異なる知を「遅れたもの」とみなし、その多くを消し去ってしまう。
失われたのは、土地でも、言語でも、伝統でもない。
人類が何千年もかけて蓄積してきた、もう一つの「知」だった。
物質的な豊かさを極限まで手に入れた未来の人類が、それでも手に入れられなかったもの。
それは、かつて自分たち自身が滅ぼしてしまったのかもしれない。
文明とは何か。進歩とは何か。そして、人間にとって幸福とは何なのか。
異なる方向へ進んだ人類の知から、「豊かさ」の意味を問い直すSF。