あらすじ
マールフレッド王国。
豊かな海に囲まれ、穏やかな人々が寄り添って暮らす小さな島国。そこには、古くから語り継がれてきた、ひとつのお伽話がありました。
『泡沫の人魚姫』
人間の世界を愛し、人間に恋をした人魚の姫が、声と引き換えに人の姿となり、その身に宿る不思議な力で愛する人々を助ける物語。
けれど、このお話は悲劇に終わります。
愛する人にかけられた死の呪い。
人魚姫は自身の命と引き換えに、彼の呪いを解くことを選びます。
けれど、声を失った人魚姫の献身に、人々は気付くことができませんでした。
そして、力を使い果たした彼女は海へ還り、ひとり泡となって消えてしまうのです。
そんな、救いようもなく、悲しい。
けれど、ただのお伽話。
それでもこの国では、物語に残された人魚姫によく似た少女の存在を、長い年月のなかで敬い、大切にしてきたのです。
――いつの日か。
ひとり、暗い海底へと沈んでいった少女の魂が、救われますようにと。