あらすじ
この世界では、人は生まれる前から持つ才能が決まっている。
母親の胎内で成長した胎児は、ある時期になると遺伝子検査を受ける。
男の子か女の子か。
そして、どんな動物因子を持っているのか。
「ライオン因子です。将来が楽しみですね」
「スズメ因子です。健康な子ですよ」
医師は当たり前のように告げ、親は笑顔を浮かべる。
人は皆、何らかの動物因子を持って生まれる。
犬、猫、蛇、鳥、昆虫――その種類は数え切れない。
動物因子は、その人の個性であり、才能であり、人生の一部だった。
因子は哺乳類型、鳥類型、爬虫類型、昆虫型などに分類される。
因子によって得意とする能力も違う。
怪力に優れた者。
俊敏さに秀でた者。
計算能力が高い者。
総合力に恵まれた者。
世界は、そんな違いを当たり前の個性として受け入れていた。
生まれた子どもは国に登録され、家族や周囲から祝福される。
そして、一人の人間が持てる因子は、たった一つ。
それが自然の摂理であり、この世界の常識だった。
しかし――
その常識を壊したのも、また人間だった。