あらすじ
教国カリスの辺境、ベウラルク村に一人の少年が生まれた。
少年の名はエルネスト。
彼は生まれながらに病弱で、魔力が満ちるたび意識を失い、見知らぬ誰かの人生を「自分自身の人生」のように実体験する奇妙で特殊な能力を持っていた。
戦士の人生。職人の人生。名も知らぬ誰かの喜びと苦しみ。そして、誰しもに平等に訪れる幾度もの死。
他人の人生を生き続けるうちに、少年は少しずつ自分自身を見失っていく。
そんなエルネストに大切なものができた。
家族。友人。そして、親友…。彼にとってのかけがえのない心の支え。
楽しかった。嬉しかった。他者の人生に振り回され、混濁する意識を繋ぎ止める唯一の想い。
共にいたい。
そのささやかな願いさえ、エルネストには許されなかった。
迫り来る死を前に、彼は自ら得た膨大な知識を使い、一つの装置を作り始める。
その名は――キューブ。
これは、世界を救う英雄の物語ではない。
哀れな少年と、その少年が遺したものを「願い」だと信じた者たちによる物語である