あらすじ
人間の記憶がデータとして保存され、自由に売買される時代。
二十三歳の記憶修復士・カイ・アラタは、失われた記憶を修復する仕事をしながら、平凡な日々を送っていた。
そんなある日、研究所で発見された一つの記憶データ。
そこに記録されていたのは、幼い頃の自分自身だった。
しかし、映像の中の少年は、カイが知らないはずの言葉を口にする。
――「君は、ちゃんと忘れている」
なぜ自分は、この記憶を持っているのか。
なぜ中央記憶管理局は、このデータを必死に消そうとしているのか。
そして、なぜ自分には十歳以前の記憶がほとんど存在しないのか。
謎を追うカイは、かつて存在した秘密施設と、月面都市《セレーネ》の存在を知る。
そこで告げられたのは、あまりにも信じ難い真実だった。
――自分の母親は生きている。
――自分は一度、月へ行っている。
――そして、自分自身が人類の未来を変えるために作られた存在だった。
失われた記憶を取り戻すたび、カイの前に現れる未知の映像。
燃え上がる地球。
崩壊する月面都市。
そして、遠く離れた火星から届いた、自分と同じ声。
『カイ。やっと見つけた』
その声の主は誰なのか。
自分は何者なのか。
そして、人類が記憶の奥底に隠してきた「未来」とは何なのか。
地球を飛び出した青年は、月、そして火星へと舞台を移しながら、人類最大の秘密へと近づいていく。
これは、失われた記憶を取り戻す物語ではない。
忘れることを選んだ一人の青年が、自分自身と人類の未来を取り戻す物語である。