あらすじ
魔物災害が起きた村に、王国最強の勇者が派遣される。規定はひとつ。魔物憑きの家畜は全頭討伐、焼却。村は九十日の封鎖。
――のはずが、牛舎から出てきた娘は、腕を糞まみれにして言い放った。
「勇者様、討伐の前に、まず検便を」
北領の村で唯一の牛医者、エルナ・ジャージー(17)。前世は、病気の出た農場の家畜を「原因がわかる前に殺す」のが仕事だった獣医。今世では、殺す前に原因を探すと決めている。
彼女の仮説は単純だ。魔力は、食べたものから作られる。ならば魔物とは、食で壊れた生き物のことではないか。
免状のない牛医者と、食べるほど強くなるはずなのに、食べると腹を壊す勇者。二人の「診察」は、王国の食卓と、百年の常識を、少しずつひっくり返していく。
斬るべきものは、魔物ではなかったのかもしれない。