あらすじ

「妻は黙って座っていればよい」 嫁いだ初日にそう言われてから、私は五年間、黙って座っていた。 五年目の冬にこの家は潰れ、私は誰にも看取られずに雪の中で死んだ。 目を開けると、嫁入りの馬車の中だった。窓の外に、あの門が見えている。 「テオドリーネ。妻は黙って座っていればよい」 夫のトルステン様が、前回と一字も違わないことを言う。 「いいえ。三日後、北の水路の普請で、石工に二重の払いをなさいます」 「……は?」 夫は笑った。三日後、石工がふたり来て、誰も笑わなくなった。 四日目は麦の買い付け。五日目は使用人頭の横領。 前回この家が傾いた順番を、私は全部この目で見ている。 「なぜ分かる」 「黙って座っておりましたから。座っていると、よく見えるのです」 そして私には、まだ夫に言っていないことがひとつある。 五年目の冬、この家を潰したのは、夫ではない。 「本日ぶんの帳簿を。前回はここから傾きました」

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カクヨム
カクヨム2026/09/21
  • 現在の作品「妻は黙って座っていればよい」と言われた家が潰れましたので、二度目は初日から口を出します ~前回この家が傾いた順番を、私は全部覚えております~