あらすじ
十二世帯だけが暮らす古いマンション、宮前ハイツ。
半年前から、住民の郵便受けに差出人不明の白い紙が届くようになった。
「深夜一時以降に洗濯機を回すのをやめてください」
「共用廊下へ私物を置くのをやめてください」
「他人の郵便物を勝手に開けるのをやめてください」
どれも同じ大きさ、同じ明朝体、同じ二行。
しかも書かれているのは、誰かが見ていなければ知りようのない住民たちの小さな秘密だった。
いつしか差出人は「白札の人」と呼ばれるようになる。
そして六枚目の白札が現れた夜、自治会長の小寺善治が自治会室で殺される。
死体のそばに残された白札。
事件直前に生まれたばかりの言葉。
限られた入退室記録。
半年間、住民を見続けていた「白札の人」が、ついに殺人まで犯したのか。
県警捜査一課の月岡菫が六枚の白札を並べた時、事件は「誰が殺したのか」とは別の奇妙な問いを持ち始める。