あらすじ
江戸城奥絵師・狩野信斎。
幕府最高峰の画誉を誇る男には、もう一つの顔があった。
それは、幕府老中直轄の暗殺工作員――【毒画師どくがし】。
時節は江戸中頃。
東北、中部、山陰の日本海側を臨む
三つの親藩・譜代では、
財政難に乗じた豪商たちが藩主を傀儡化し、
抜け荷や密約で幕府の脅威となりつつあった。
だが、公に裁けば
「お家騒動」として幕府の威信が失墜する。
命を受けた信斎は、
薬師と隠密の弟子を引き連れ、
御用画師として地方へ下る。
名目は「豪華なる障壁画の寄贈」。
水銀を含む「辰砂」、
ヒ素を秘めた「雌黄」、鉛毒たる「鉛白」。
アトリエに堂々と保管された有毒顔料を、
信斎は特殊な調合で絵の具へと変える。
熱で気化する屏風、
密閉部屋を毒で満たす襖絵、
筆先を舐める癖を利用した指導――。
誰の目も欺き、
毒の絵筆が描くのは、
完璧なる「病死」のシナリオ。
「絵筆に刃は要らぬ。
その命、美しく描き消して見せよう」
切っ先を交えることなく悪を滅ぼす、
美しくも恐ろしい暗殺絵師の、
日本海縦断ミッションが幕を開ける!