あらすじ
てんてんてん、と階段の上から『恋』が落ちてきた。
誰のだろう。
床に貼りついた『恋』という黒文字を見つめてから、薄っぺらなそれを爪でかりかりと引っ掻いて拾い上げる。
手に取った瞬間、この文字の所有者の名前が頭に浮かんだ。
──華原恋色《かはらこいろ》。
この『恋』はどうやら彼女のものらしい。たぶん彼女はクラスメイトだ。
階段を上がって教室に向かいながら僕は『恋』をポケットに入れる。
彼女の名前の一文字が、指先に触れた。
何気ない毎日の繰り返しが誰かを救うこともある。
自分の名前を嫌う彼女と遅刻常習犯の彼の青春短編です。