あらすじ
気がつけば、俺――九条稲はあの世の役所「黄泉農地課」に配属されていた。 ここでは死んだ人間の「未練」が畑に実り、腐れば現世に災いを降らせるという。 元ニートの俺に課された仕事は、鎌一本で人の未練を刈り取ること。 ただし対価として、刈るたびに自分の「生前の記憶」が一片ずつ土に還っていく。
無愛想な毒見役の娘・白薊と組まされ、腐った未練の「味」から、 なぜその魂が現世を離れられないのかを読み解く日々。 夜は課の食堂で、あとしまつ屋の甘露寺ふゆが出す飯に泣きながら、 少しずつ「働く」ということを身体で覚えていく。
だがある日、稲が刈り取った未練の実の中から見つかったのは―― 「九条稲、二十六歳。死因:不明。未練:未登録」の札だった。
自分の未練が、自分の畑に実っている。 記憶を還すほど近づく真実。俺はいったい、何を残して死んだのか。 汗と土と飯と、少しの毒。死んだあとで始まる、人生の追い作(おいさく)の物語。