あらすじ
魔法が生活のすべてを支える世界、アルデア王国。
火を起こすのも、水を運ぶのも、病気を治すのも魔法。
魔力の多さが人間の価値を決めるこの国で、十八歳のレオン・グラウは生まれつき魔力を持たなかった。
魔法は使えない。
剣も弱い。
家柄もない。
そんな彼が就職できたのは、王都でも地味な部署として知られる「王都測量局」だった。
ところがある日、レオンは一本の橋に異常を見つける。
「この橋、三年前の図面と寸法が合いません」
魔術師たちは「魔力の流れに問題はない」と取り合わない。
しかしレオンは、橋脚の沈み、川底の変化、土の流れ、石材に残った傷を一つずつ調べていく。
そして辿り着いた答えは――
「これ、魔法の問題じゃありません。地面が動いています」
誰にも信じてもらえなかった三日後、橋は崩落した。
幸い死者は出なかったものの、その事故をきっかけに王都地下の古い魔導水路まで損傷していることが判明する。
調査を進めるレオンが発見したのは、建国以来ほとんど誰も存在を知らなかった巨大な設備。
それは、王都の水、火、農業、建築、医療を支えてきた「旧魔導網」だった。
魔法は万能ではない。
水は低いところへ流れる。
石は重ければ沈む。
鉄は錆びる。
機械は壊れる。
そして、人間は間違える。
魔法に頼り切ったこの国には、「魔法で動くものを維持する」という発想そのものが欠けていた。
変人技師、薬草と毒に詳しい少女、腕は一流の鍛冶師、落ちこぼれの魔術師、怪力自慢の農村少女、そして魔法を失った元天才魔術師。
様々な事情を抱えた仲間たちとともに、レオンは壊れゆく王都の謎に挑む。
測って、考えて、失敗して、人に頭を下げて、それでもまた直す。
勇者でも、英雄でも、最強の魔術師でもない。
魔法の使えない少年の仕事は、やがて王国そのものを変えていく。
「世界を救う方法なんて、僕には分からない」
それでもレオンには、一つだけ分かることがある。
「壊れる前に見つけることなら、できます」
これは、魔法がすべてだった世界で、「技術」という新しい可能性を見つけていく少年と仲間たちの物語。