あらすじ

三十九歳の設備保全員・門脇智紀が病院を訪れた理由は、DNAではなかった。 右腕の小さな傷が、十日ほど治りきらなかった。ただ、それだけだった。 ところが採血された血液から、通常の説明では処理しきれない「第二パターン」候補が検出される。取り違え、混入、血液だけに起きた変化――医療者たちは、一つずつ可能性を検証していく。 だが、観測は血液だけに閉じなかった。 口腔、皮膚、毛根。 見た目は何も変わらない。仕事もできる。妻も娘も、変わらず彼を智紀と呼ぶ。 それでも、身体を測るほど、「自分」を支えていたはずの証拠だけが安定しなくなっていく。 答えを必要とする患者。 答えのためだけには身体を傷つけない医療。 そして、娘の身体まで自分の答えのために使うのかという選択。 これは、DNAを書き換える怪異を断定する物語ではない。 何が起きているのか最後まで決めきれないまま、それでも誰を本人と呼び、どこまで調べ、どこで止めるのかを選び続ける医療ホラー。 本人が生活へ戻り始めたあとも、保存された血液だけが、一つの値にならない。

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カクヨム
カクヨム2026/09/20
  • 現在の作品『観測者圏|CLINICAL』CASE02「あなたのDNAではない」