あらすじ
「助けて」と言えない子を、どうやって助ければいいのだろう。
高校一年生の朝倉明は、入学式の日、隣の席になった水城沙也加の異変に気づく。
大きな音に怯え、人に触れられることを怖がり、いつも自分の存在を消すように俯いている少女。
その姿を見て、明はすぐに分かった。
自分と同じだ。
けれど明は、彼女に何があったのかを聞かなかった。
無理に救おうともしなかった。
ただ、逃げ道を塞がないように隣にいる。
いつか彼女自身が「助けて」と言える、その日まで。
少しずつ笑えるようになり、自分の気持ちを口にできるようになっていく沙也加。
明にも、ようやく彼女が普通の高校生活を取り戻せるかもしれないと思えた。
――そのはずだった。
ある夏の日、二人は東京を離れる。
行き先もないまま逃げ続け、海を渡り、最後に辿り着いたのは地図の片隅にある小さな島――日々島。
制服姿の高校生が二人きりで現れたというのに、島の人たちは何も聞かなかった。
名前も。
親のことも。
ここへ来た理由も。
ただ、
「腹減ってるだろ」
そう言って、温かいご飯を差し出した。
どうして、この人たちは何も聞かないのか。
どうして、自分たちにこんなにも優しいのか。
そしてなぜ、この島には同じように“何かを失った人”ばかりが集まっているのか。
傷は消えない。
過去もなくならない。
それでも、人はもう一度、生き直すことができる。
これは、傷だらけの二人と、傷を抱えた島の人々が、何でもない毎日の中で少しずつ「生きたい」を取り戻していく物語。