あらすじ
小国レスタリアは、強大なヴァルケイン帝国の侵攻によって、わずか一月で滅びた。
国王も王妃も、忠臣たちも失い、ただ一人生き残った姫君セリス。
燃え落ちる王城から逃れた彼女を待っていたのは、父王が最後に呼び寄せた一人の漂泊の騎士だった。
その名は、ヴァルガン。
二メートルを超える巨躯。
全身を覆う銀灰色の重甲冑。
顔すら見せず、黒いマントをまとい、どんな悪路も黙々と歩き続ける謎の騎士。
「あなたを必ず、無事に逃します」
素性も分からないヴァルガンを、当初セリスは恐れ、警戒する。
しかし旅を続けるうち、口数は少なくとも誰より誠実で、決して約束を違えないその姿に、少しずつ心を開いていく。
やがて二人の旅には、人の言葉を理解する巨大な灰色の魔狼シーヴァも加わって――。
魔物、盗賊、帝国の追手。
次々と襲い来る脅威を、ヴァルガンはただ一歩も退くことなく退けていく。
旅の途中、セリスは知ることになる。
その騎士が人々から、ある異名で呼ばれていることを。
《歩く城壁》
けれどセリスは、まだ知らない。
その名が意味する本当の恐ろしさを。
これは、国を失った最後の姫君と、誰にも止められない重装騎士が始める、少し不思議で、時々のんびりした二人旅の物語。